6.01(c) 捕手の妨害

 捕手またはその他の野手が、打者を妨害(インターフェア)した場合、打者は走者となり、アウトにされるおそれなく、安全に一塁が与えられる。(ただし、走者が一塁に進んで、これに触れることを条件とする)

 しかし、妨害にもかかわらすプレイが続けられたときには、攻撃側チームの監督は、そのプレイが終わってからただちに、妨害行為に対するペナルティの代わりに、そのプレイを生かす旨を球審に通告することができる。

 ただし、妨害にもかかわらず、打者が安打、失策、四球、死球、その他で一塁に達し、しかも他の全走者が少なくとも1個の塁を進んだときは、妨害とは関係なく、プレイは続けられる。(以降省略)

 

ーー例題:

【問1】 0アウト走者二塁で打者は二ゴロを打ち、一塁でアウト。この間に走者は三塁に達した。しかし、打つときバットが捕手のミットに触れていた。どう処置したらよいか。

【答1】 プレイ直後、監督からプレイを生かしたい旨の申し出があれば1アウト走者三塁とする。しかし、申し出がなければボールデッドとし、捕手の打撃妨害で打者に一塁を与え走者は元に戻す。(5.05b(3)【注1】)

 

【問2】 二塁走者が三盗をしたとき、打者のバットが捕手のミットに触れ、打つことができなかった。どう処置したらよいか。

【答2】 打者が打っても打たなくても、打撃妨害となる。打者には一塁が与えられる。原則として走者は元の塁に戻らなければならないが、二塁走者は三塁へ盗塁していたので三塁に進める。(5.05b(3)、5.06b(3)(D))

 

【問3】 2アウト走者二・三塁、打者はバットが捕手のミットに触れながらも右翼線に安打した。三塁走者は生還、二塁走者は一挙に本塁を突いたが、右翼手からの送球でタッグアウトとなった。このとき攻撃側の監督から今のは打撃妨害だから、打撃妨害の方をとってほしいと申し出があった。どう処置したらよいか。

【答3】 打者は打撃妨害されながらも一塁に生き、他の全走者も1個以上進塁しているので打撃妨害は無かったものと扱い、ボールインプレイで監督の選択権はなくなる。得点は1点が記録され攻守交替となる。(5.05b(3))

 

【問4】 先攻チームが1点リードして迎えた最終回の裏、1アウト走者二・三塁、打者が妨害されながらも右翼フライを打って2アウトとなったが、三塁走者はリタッチして生還、二塁走者もリタッチして右翼手の本塁悪送球によって三塁を回って生還した。どう処置したらよいか。

【答4】 監督の申し出がなければボールデッドとし、三塁走者を三塁に、二塁走者を二塁に戻し、打者走者は打撃妨害で一塁が与えられる。(5.05b(3))

 

【問5】 1アウト走者一・二塁、打者は捕手に妨害されながらも二塁打した。二塁走者は生還、一塁走者は二塁を空過して三塁に、打者走者も一塁を空過して二塁に進んだ。このとき攻撃側の監督はアピールアウトされるのを恐れて、打撃妨害で1アウト満塁にしてほしいと球審に申し出た。球審はこの申し出を受け入れてよいか。

【答5】 申し出を受け入れてはならない。この場合、妨害にもかかわらず打者は安打し、他のすべての走者は進塁しているから、妨害とは関係なくプレイは続けられる。また、守備側から二塁一塁それぞれにアピールを行い、審判員がこれを認めれば3アウトとなるので得点は記録されない。(5.05b(3))

 

「三塁走者がスタートを切っていた場合の捕手の打撃妨害」

【問6】 1アウト二・三塁。三塁走者は投球と同時にスタートしていましたが、二塁走者はスタートを切っていませんでした。三塁走者がスタートしていたのに気づいた捕手は、慌てて本塁前に出て投球を捕ろうとしました。しかし、前に勢い良く飛び出し過ぎたため、捕手はやや逸れた投球を捕ることができず、ボールはバックネット方向へと転がっていきました。三塁走者はホームイン。二塁走者も生還を狙い本塁でクロスプレイとなりましたが、セーフの判定で2点が入りました。捕手が投球に触れた場所は、本塁を越えた投手寄りの位置でした。打者はバントの構えはしておらず、捕手が本塁上へ出てきたので驚いて打席を外したので打とうとするような行為は何もしていません。守備の妨げになるような行為もありませんでした。

 さて、この場合に審判員はどのような処置を取ることが適切だと考えられますか?(三択)

①三塁走者が投球と同時にスタートを切っていたケースで、捕手が本塁を越えて投球を捕ろうとした場合には、投手にはボークが課され、打者はインターフェアによって一塁が与えられます。従って、スタートを切っていなかった二塁走者も1つ進塁できます。このケースではボールデッドになるので、三塁走者は得点、二塁走者は三塁へ戻し、打者は一塁に進めます。

②捕手が投球を本塁上に出て捕球しようとしたので、捕手の打者への妨害となります。このケースではインプレイですので、三、二塁走者は得点、打者は一塁に進めます。

③このケースでは投手にボークが課されますので、そのままプレイは続きますが、打者は実際には打たなかったので、打ち直しとなります。ボークの規則適用となります。

【答6】 ①の記述が正しいと考えられます。

通常の捕手が打者を妨害した場合の規則と、三塁走者が本塁にスタートを切っていた場合に捕手が打者を妨害した場合とでは、その後の処置が異なるためです。(5.05b(3)と6.01gの違い)

三塁走者がスタートを切っていた場合の捕手の打撃妨害」には、6.01gを適用します。

 

6.01g スクイズプレイまたは本盗の妨害

 三塁走者が、スクイズプレイまたは盗塁によって得点しようと試みた場合、捕手またはその他の野手がボールを持たないで、本塁の上またはその前方に出るか、あるいは打者または打者のバットに触れたときには、投手にボークを課して、打者はインターフェアによって一塁が与えられる。この際はボールデッドとなる。

※通常の打撃妨害と異なり、ボールデッドでプレイを継続させないという点が大きくことなります。

 

引用元:

問1~問5:競技者必携2019版

問6:ベースボールクリニック2019年5月号